「いつ恋」

  「宇宙戦艦ヤマト」を観たことがないし、サザンオールスターズも聞かない。そして、「東京ラブストーリー」も観たことがない。
  このように僕のヘソは、相当曲がっているようだ。

  テレビを観なくなってから久しいが、今、毎週欠かさず観ているドラマがある。「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」である。冒頭で、偉そうなことを言っておきながら、通称「いつ恋」は、「月9」である。言っていることが、支離滅裂でもある。

  とにかく、僕は毎週「いつ恋」を楽しみにしているのである。それは、脚本が「坂元祐二」だからだ。いつどの作品で、彼のことを知ったのかは記憶にないが、彼のドラマは欠かさず観るようにしている。 最近だと、「最高の離婚」、「MOTHER」、「それでも生きてゆく」などが有名である。

  坂元祐二の描く世界は、とにかく切ない。僕は、この言葉にどうやらとても弱いみたいで、あるとき雑誌「BRUTUS」が「切ない特集」を組んだとき
そこで、紹介されていた作品(「ドラえもん」の最終回)や出来事(ワールドカップフランス大会のメンバーに外れた三浦カズ)などが、あまりに「ドンズバ」だったため、自分でも驚いたぐらいだ。

  坂元祐二が描く切なさは、すべて「すれ違い」によるものである。橋本治は、「デビッド百コラム」の中で、メロドラマについて言及し、「男と女は、すれ違うことで初めて等価である」と言っている。ここまで「すれ違い」に拘る作家を、僕は坂元祐二と石井隆以外には知らない。「いつ恋」の中でも主人公の音と練は、見事にすれ違う。通勤のバスの中で、家に帰る途中にある坂道で。

  また、「いつ恋」が描いているのは、「東京」である。若者の「東京離れ」が進むなか、どうして今更、東京に馴染むことのできない、地方出身の若者たちを描くのか、僕にはどうしてもわからなかった。その問いに対する答えを、僕は、一つ用意した。「東京ラブストーリー」である。この作品は、彼の出世作で、「月曜日の夜9時は街から女性たちが消えた」とまで言われた作品である。

  一方で、僕の敬愛する高橋幸宏が結成したテクノバンド「METAFIVE」が「Luv U Tokio」という曲を発表している。その曲の中で、YMOの名曲「TECHNOPOLIS」の中で何度も繰り返される、余りにも有名な「TOKIO」というフレーズを採用している。

  この二つの「出来事」を、単なる偶然だと僕は考えない。2020年には、東京でオリンピックが開催される。オリンピック開催地に選ばれたときの、あの騒ぎようをみて僕はとても悲しくなった。それは、オリンピックさえ開催すれば、現状のこの行き詰った状況が打破できるのではないかといった思考停止状態に対する絶望感からだった。と同時に、かつて「TOKIO」だったころのポテンシャルは、今の東京にはもうないのではないだろうか?とも思っている。だから、若者たちは、もう東京から離れようとしている。

  坂元祐二や高橋幸宏が、今、敢えて「東京」を描こうとしているのは、かつての「TOKIO」に対する郷愁であり、テレビがまだそれでも元気だったことへの郷愁でもある。

 「東京ラブストーリー」を観てみようと思う。